マザーボードによっては、グラフィックボードを挿すことのできるPCI-Expressスロットが複数本搭載されているモデルがあります。
その場合、一番上の(CPUに一番近い)PCI-Expressスロットにグラフィックボードを挿すのが一般的ですが、もし他のPCI-Expressスロットに挿した場合どうなるのでしょうか?
今回試す機会があったので、本ページではその結果についてレポートしたいと思います。
PCI-Expressスロットを変更してみようと思った理由
AMD Ryzen 5000シリーズAPUはPCI-Express3.0接続
Ryzen APUの内蔵GPUとグラフィックボードのGPUを併用する方法でも書きましたが、現在私は内臓GPU付きのRyzen APU(AMD Ryzen5 5700G)を使用しています。
このAMD Ryzen 5000シリーズAPU版はFluid Motionも使える内蔵GPUが搭載されているというメリットがある一方で、内蔵GPU無しのAMD Ryzen 5000シリーズCPU(AMD Ryzen7 5700Xなど)と比較するとスペック面でいくつかの制限があるというデメリットがあります。
その主な制限としては、L3キャッシュ容量が32MBから半分の16MBとなっている点と、PCI-Express4.0には対応しておらずPCI-Express3.0のままという点があります。
つまり内蔵GPU搭載のAMD Ryzen 5000シリーズAPUを使用した場合、たとえマザーボードやグラフィックボードがPCI-Express4.0に対応していてもPCI-Express3.0で接続されることになります。
PCI-Expressのバージョンやレーン数による転送速度の違いは下記の表の通りです。
4レーン(x4) | 8レーン(x8) | 16レーン(x16) | |
---|---|---|---|
PCI-Express4.0 | 約8GB/s | 約16GB/s | 約32GB/s |
PCI-Express3.0 | 約4GB/s | 約8GB/s | 約16GB/s |
他サイトのベンチマーク結果を見ると、PCI-Express4.0 x16のグラフィックボードを3.0 x16接続にした場合はパフォーマンスの低下はほとんど見られず、PCI-Express4.0 x8のグラフィックボードを3.0 x8接続にした場合は0%~5%程度のパフォーマンス低下、PCI-Express4.0 x4のグラフィックボードを3.0 x4接続にした場合は10%~20%程度のパフォーマンス低下が見られるようです。
X570チップセットの仕様
現在私が使っているマザーボードはASRock X570 Phantom Gaming 4で、こちらはPCI-Express4.0スロットが2本搭載されています。
そしてこのマザーボードに搭載されているX570チップセットの仕様を確認すると、そのうち1本はチップセットと接続されていることが分かります。
(画像右上にある8x PCIe 4.0 Lanes)
ここで気になったのは、こちらはPCI-Express4.0 x8ではあるもののCPU(APU)ではなくチップセットと接続されていることから、もしかするとこちらにグラフィックボードを挿せばPCI-Express4.0で接続されるんじゃね?という点です。
上記の表の通り、PCI-Express3.0 x16とPCI-Express4.0 x8では転送速度が約16GB/sと変わらないのですが、どうせなら4.0にしておいた方が良さそう(笑)というのと、熱を発するグラフィックボードは同じく熱を発生させるCPUから遠ざけた方が良いのではないか?と考え、試しにチップセット側のPCI-Express4.0スロットにグラフィックボードを挿してみることにしました。
下のマザーボードレイアウト図でいうと、赤枠のPCIE1からPCIE3に挿し替えてみました。
PCI-Express4.0で接続されたものの…
PCI-Expressスロットの違いによるベンチマーク結果の変化
グラフィックボードをCPU側のPCI-Expressスロットからチップセット側のPCI-Expressスロットに挿し替えてみたところ、思惑通りPCI-Express4.0で接続することができました。
ただ一つ気になるのが、チップセット側のPCI-Expressスロットではレーン数が4(x4)に減ってしまったという点です。
今回使用したグラフィックボードはASUS ROG-STRIX-RTX3060-O12G-V2-GAMING(GeForce RTX 3060)で、PCI-Expressのレーン数は16となります。
CPU側のPCI-Expressスロット(上記レイアウト図のPCIE1)に挿していたときはPCI-Express3.0 x16で接続されていたことから、上記の表にもあるように転送速度は約16GB/sから約8GB/sとなってしまっています。
既に述べた通り、他サイトのベンチマーク結果によるとPCI-Express4.0 x16(約32GB/s)からPCI-Express3.0 x16(約16GB/s)に変わってもパフォーマンス低下はほとんど見られないようなのですが、PCI-Express3.0 x16(約16GB/s)からPCI-Express4.0 x4(約8GB/s)の場合はパフォーマンスに変化があるのでしょうか?
実際にFF15ベンチマークで検証してみたところ、PCI-Express3.0 x16ではFHD高品質で9330(とても快適)だったスコアがPCI-Express4.0 x4では7838(快適)となり、およそ16%のパフォーマンス低下となってしまいました。
レーン数が4になってしまった原因
ところで、なぜPCI-Expressスロットを変更したらレーン数が4になってしまったのでしょうか?
結論からいうと、それはどうやらマザーボードの仕様だったようです。
マザーボードのマニュアルを確認してみると下記のような注意書きがありました。
とりあえずマザーボードの仕様が原因ということは分かったのですが、これはX570チップセットの仕様からくるものなのでしょうか?
(上記のX570チップセット仕様を見ると、CPUとチップセット間の接続がPCI-Express4.0 x4となっています。)
それとも、マザーボードによってはチップセット側のPCI-Expressでもレーン数が減らないモデルもあるのでしょうか?
その辺りについては検証環境が無いため分かりませんが、とりあえず結論として言えることは、特にゲームなどでパフォーマンスを最大限に出したいメインのグラフィックボードは、原則としてCPU側のPCI-Expressスロットへ挿した方が安心のようです。
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