Wake On LANとVPNで外出先から自宅PCを遠隔起動する方法

本ページでは、Wake On LANとVPNを使って外出先など外部ネットワークから自宅ネットワーク(LAN)内にあるPCを遠隔起動する方法について解説します。

Wake On LANの必要性

VPNで外出先から自宅PCにアクセスする方法でVPNを使って外部から自宅ネットワーク内のPCへアクセス出来るようになりましたが、このままでは自宅PCを常に起動状態にしておかなければなりません。
(PCの自動スリープ機能などもオフにしておく必要があります。)

外出前に毎回PCを起動しなければならないのは不便ですし、PCを常時起動しておくのは電気の無駄にもなってしまいます。

こうした問題を解決するため、Wake On LANを利用してスリープ(シャットダウン)状態のPCを外出先から必要な時に遠隔起動できるようにします。

Wake On LANとは

Wake On LAN(WoL)はネットワークを通じてPCを起動するための技術です。

Wake On LANはマジックパケットと呼ばれるネットワークパケットを対象のPCに送信することで、遠隔地からのPC起動を実現しています。

Wake On LANを利用するには、マジックパケットを送信する側のデバイス設定(アプリのインストール等)はもちろん、それを受け取るPC側でもマジックパケットを受信したら起動するようにあらかじめ設定しておく必要があります。

なお、Wake On LANで出来ることはPCの起動に限られるため、自動的にPCのスリープやシャットダウンが行われるように、コントロールパネルの「電源オプション」や「タスクスケジューラ」の設定も一緒に行っておくことをオススメします。

Wake On LANの種類

Wake On LAN(WoL)には、ソフトウェアWoLとハードウェアWoLの2種類があります。

Wi-Fi用の無線LANアダプタやUSB接続など外付けのLANアダプタは主にソフトウェアWoLのみ対応で、スリープからの復帰は出来ますがシャットダウンからの復帰は出来ません。

したがって、ハードウェアWoLでシャットダウンからの復帰を行いたい場合は、基本的に内蔵の有線LANアダプタを使用します。

なお下の表にもある通り、たとえハードウェアWoLを利用した場合でもハイブリッドシャットダウン(S4)からの復帰は出来ません。

そのため、ハードウェアWoLを利用したい場合は、あらかじめハイブリッドシャットダウンを無効にしておく必要があります。
(ハイブリッドシャットダウン無効化の設定方法については後述します。)

ソフトウェアWoLとハードウェアWoLの違い
方式 ソフトウェアWoL ハードウェアWoL
スリープ(S3)から復帰 ×
休止状態(S4)から復帰 ×
ハイブリッドシャットダウン(S4)から復帰 × ×
クラシックシャットダウン(S5)から復帰 ×

Wake On LANの設定

自宅PCのプライベートIPアドレスを固定する

Wake On LANを利用するには、起動させたいPCを常に特定できるようにするため、対象となるPCのIPアドレスを固定しておく必要があります。

WindowsでのプライベートIPアドレス設定

まずはWindows上で、外部からアクセスしたい自宅PCのプライベートIPアドレスを固定します。

設定するプライベートIPアドレスは通常「192.168…」から始まるアドレスとなりますが、ルーターの機種により異なるため詳しくはお使いの製品のマニュアルをご確認ください。
(ここではPCのIPアドレスが「192.168.0.100」、ルーターのIPアドレスが「192.168.0.1」とした場合の例となります。)

Windows上でプライベートIPアドレスを固定

Windows上でプライベートIPアドレスを固定

ルーター設定でPCのIPアドレスとMACアドレスを紐づけ

Wake On LANでPCを起動するには、対象となるPCのIPアドレスがルーターのARPテーブル(IPアドレスとMACアドレスの対照表)に記録されている必要があります。

このARPテーブルですが、ルーターのモデルによっては一定時間経過後にデータが破棄されてしまう可能性があります。

そのため、起動させたいPCが長時間シャットダウン(スリープ)状態にあってもルーターがそのPCを特定出来るようにするには、ルーター側の設定でPCのプライベートIPアドレスとMACアドレスを紐づけておく必要があります。

TP-Linkのルーターでは「IP & MAC バインディング」の設定で接続機器のプライベートIPとMACアドレスを紐づけておくことができます。
(こちらも設定方法はルーターの機種により異なります。詳しくはお使いの製品のマニュアルをご確認ください。)

ここでの「MACアドレス」は自宅PCのネットワークアダプタのMACアドレスを、「IPアドレス」は先ほど設定したプライベートIPアドレスを入力します。

画面下部の「ARPリスト」に、紐づけしたPCのIPアドレスとMACアドレスが表示されていればOKです。

IP & MAC バインディング

IP & MAC バインディング

自宅PCのネットワークアダプタ設定

次にWindowsのデバイスマネージャーでネットワークアダプタを選択し、「詳細設定」タブで以下の項目を設定します。
(お使いのネットワークアダプタにより項目名が異なる場合がありますので、詳しくはお使いの製品のマニュアルをご確認ください。)

  1. 「Wake on Link 設定」を無効
  2. 「Wake On Magic Packet」を有効
  3. 「Wake on Pattern Match」を有効

なお、私のマザーボードに搭載されたネットワークアダプタ「Intel I211 Gigabit Network Connection」の場合では、Windows標準のドライバではこれらの設定項目が表示されなかったのですが、Intelの公式サイトから新しいドライバをダウンロードしてインストールすると表示されるようになりました。

ネットワークアダプタの「詳細設定」タブ

ネットワークアダプタの「詳細設定」タブ

さらに「電源の管理」タブで以下の項目を設定します。

  1. 「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェック
  2. 「Magic Packetでのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェック
ネットワークアダプタの「電源の管理」タブ

ネットワークアダプタの「電源の管理」タブ

ハードウェアWoLの設定

さて、ここまでの設定でスリープからの復帰(ソフトウェアWoL)は使えるようになりました。

ここからさらにシャットダウンからの復帰(ハードウェアWoL)も使えるようにするには、引き続き以下の設定を行っていきます。

ハイブリッドシャットダウンを無効にする

前述のとおり、ハードウェアWoLを使ってもハイブリッドシャットダウン(S4)からの復帰はできません。

そのため、ハードウェアWoLを使う場合はハイブリッドシャットダウンを無効にし、クラシックシャットダウン(S5)を行うように設定しておく必要があります。

Windowsでハイブリッドシャットダウンを無効にするには、コントロールパネルの「電源オプション」>「電源ボタンの動作を選択する」から「シャットダウン設定」項目にある「高速スタートアップを有効にする」チェックボックスをオフにします。

「高速スタートアップを有効にする」をオフ

「高速スタートアップを有効にする」をオフ

ネットワークアダプタの追加設定

続いてネットワークアダプタの追加設定を行います。

Windowsのデバイスマネージャーでネットワークアダプタを選択し、「詳細設定」タブで「PMEをオンにする」を有効に設定します。

もし「詳細設定」タブにこの設定項目が無い場合、お使いのネットワークアダプタでシャットダウンからの復帰(ハードウェアWoL)は使用することが出来ない可能性があります。

なお、私のマザーボードに搭載された「Intel I211 Gigabit Network Connection」の場合では、Windows標準のドライバでは「PMEをオンにする」の項目が表示されなかったのですが、Intelの公式サイトから新しいドライバをダウンロードしてインストールすると表示されるようになりました。

ネットワークアダプタの「PMEをオンにする」設定

ネットワークアダプタの「PMEをオンにする」設定

UEFIの設定

次に、UEFIで「PCIE Devices Power On」をEnabledに設定します。
(ここではASRock製マザーボードでの設定方法について記載しています。他社製のマザーボードでは設定項目が異なる場合がありますので、詳しくはお使いの製品のマニュアルをご確認ください。)

PCIE Devices Power On

PCIE Devices Power On

なお、ASRock製マザーボードのUEFIには「Boot From Onboard LAN」という紛らわしい名前の設定項目もありますが、こちらはPXEブートのための設定なのでデフォルトのDisabledのままで問題ありません。

Boot From Onboard LAN

Boot From Onboard LAN

スマートフォンアプリのインストールと設定

ここからはスマートフォンの設定を行います。

まずはスマートフォンからWake On LANを使って自宅PCを起動するためのアプリをインストールします。

スマートフォン用のWake On LANアプリは何種類かありますが、本ページでは「Wake On Lan」というAndoridアプリを使った方法を解説します。

まずはスマートフォンのGoogle Playから「Wake On Lan」アプリをインストールします。

アプリを立ち上げると次のような画面が表示されるので、右下の「+」をタップします。
このときスマートフォンは自宅内ネットワークに接続した状態にしておいて下さい。

Wake On Lanアプリ(設定その1)

Wake On Lanアプリ(設定その1)

すると自宅内ネットワークに接続されたデバイスが次々とスキャンされるので、その中からWake On LANで起動させたい自宅PCを選択します。

Wake On Lanアプリ(設定その2)

Wake On Lanアプリ(設定その2)

するとリストに自宅PCが追加されるので、右側のアイコンをタップします。

Wake On Lanアプリ(設定その3)

Wake On Lanアプリ(設定その3)

自宅PCの編集画面が表示されるので、MACアドレスとIPアドレスが正しく設定されているか確認します。

設定を変更した場合は右上の保存ボタンをタップします。

Wake On Lanアプリ(設定その4)

Wake On Lanアプリ(設定その4)

Wake On LANの動作確認

最後にWake On LANを使った起動確認をするため、まずは自宅PCをスリープもしくはシャットダウン状態にします。

自宅ネットワーク内からの起動確認

スマートフォンを自宅内ネットワークに接続した状態で「Wake On Lan」アプリを開き、先ほど設定した自宅PCアイコン右下のドットが赤色(スリープもしくはシャットダウン状態)になっていることを確認します。

自宅PCのデバイス名(DESKTOP)をタップし、自宅PCが起動すればOKです。
(アプリ上では、自宅PCが起動するとアイコン右下のドットが赤色から緑色に変わります。)

Wake On Lanアプリ(自宅PCを起動)

Wake On Lanアプリ(自宅PCを起動)

外部ネットワークからの起動確認

続いて、外部ネットワークからVPNを使って自宅ネットワーク内の自宅PCを起動出来るか確認します。

まずは、再び自宅PCをスリープもしくはシャットダウン状態にします。

次に、スマートフォンを自宅ネットワークから切断した状態(モバイルネットワークを使用した状態)にした後に「OpenVPN Connect」アプリを開いてVPN接続を行います。

スマートフォンをVPN接続した状態で「Wake On Lan」アプリを開き、先ほどと同じように自宅PCのデバイス名(DESKTOP)をタップし自宅PCが起動すればOKです。

Wake On Lanアプリ(自宅PCが起動している状態)

Wake On Lanアプリ(自宅PCが起動している状態)

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